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なぜ認知症の人は家に帰りたがるのか? 恩蔵 絢子 &永島 徹

なぜ認知症の人は家に帰りたがるのか? 恩蔵 絢子 &永島 徹

2026年9月20日(日)なぜ認知症の人は家に帰りたがらないのか? 恩蔵 絢子&永島 徹 p401〜p420抜粋

アシストポイント

幻覚が見られたら・・・

ご本人が安心できるための手助けとなる対応が重要です。

ご本人の思い:

目の前の状況に戸惑っています。

レビー小体型認知症では、脳の視覚野などの働きの問題で、実際にはそこにいないものがあるように見てしまうことがあります。

その状況での否定や訂正は、自分のことをわかってもらえないと感じることから、ご本人の不安や混乱は増すばかりです。

大切な事は、幻覚への対応ではなく、幻覚を体験しているご本人の対応です。

目の前に現れた虫や人に驚き、パニックになってるかもしれません。

大きな戸惑いを感じているかもしれません。そんな状況を理解し、安心できるための手助けとなる対応が重要です。

誰もいないよ、虫は払ったから大丈夫だよと安易に答えず、まずはご本人からしっかり話を聞きましょう。

その上で、幻覚はシミや影など見間違いやすい環境で生じやすいため、室内環境整えるなどして予防していただけたらいいですね。

なぜ、前頭側頭型認知症の人は怒りっぽくなるのか

太郎さん、男性、要介護2、75歳、前頭側頭型認知症、夫婦2人暮らし

太郎さんは、長年、建設会社に勤務し、総括部長を務め上げて退職しました。

退職後も子会社の人材育成を任されていましたが、ある時から仕事に厳格だった太郎さんが会議中に集中できず、突然、会議とは関係ない発言をしたり、テーブルに用意されたお菓子を夢中になって食べてしまう行動が見られるようになりました。太郎さん自身も変化を感じたのか、子会社を依頼退職その半年後、妻や娘の説得で予約専門医を受診し、前頭側頭型認知症と診断されました。

そのような中、インフルエンザの予防接種のため、妻と一緒に近所の会議を受診した際、待合室のテレビに向かって、突然大声で馬鹿野郎となってしまうことが起こりました。その後、自宅でも鏡や消えているテレビに向かって、この馬鹿が、そんなんじゃダメだと怒鳴るようになりました。

家族思い出、大きな声など出したことがなかった、太郎さんのその様子に、妻は怖くなってしまいました。

妻は自分1人では、どうにもならないと考え、地域包括支援センターに相談に行き、デイサービスの利用開始しました。見学も含め妻と一緒に3回通い、少しずつ場の雰囲気に馴染んできた太郎さんは、徐々に安定し、大きな声でなることもなくなっていきました。

けれど、再び変化が訪れました。スタッフがそばにいるときは、笑顔で活動に参加していましたが、集中できる時間が短くなっていきました。

ずっと立ち上がって、外に出て行こうとしたり、そんなんじゃダメだ!と声を荒らげるようになりました。スタッフは太郎さんの様子から、他の利用者など新たな人との関わりが、疲れと言うストレスになってしまっていることを感じ取りました。

そして、もともと元気な太郎さんらしく、その言葉は頑張らなくてはダメだと自身に言っていることに気づきました。

そこで頑張らなきゃいけないと思ってしまうんですね。今も頑張っていらっしゃいますよ。あせらずやっていきましょうと伝えると、イライラしていた太郎さんのトーンがとスッと下がっていきました。

脳科学からの解説。

前頭眼窩皮質の働き

アルツハイマー型認知症、レビー小体認知型、のほかに、特徴的な認知症として、前頭側頭型認知症があります。

その名前の通り、前頭葉や側頭葉から脳の維持が始まる認知症です。

アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症よりもさらに稀な症状なので、わかっていないこともより多いことになります。

前頭側頭型認知症の初期には、前頭眼か皮質と呼ばれる、部位の働きが落ちやすいことが知られています。

前頭眼か皮質の大きな役割の1つは、感情のコントロールです

図30;前頭眼窩皮質

目のすぐ上に位置し、感情のコントロールを司る。

認知症ではなく、事故によってこの部位を大きく損傷した人がいます。アメリカの、フィニアス、ゲージさんです。(図31)

彼は鉄道会社で働いていました。

誠実で穏やかで頼りになる存在で、建設現場のリーダーを担っていました。

しかし、1848年、レールを敷くために岩や山を砕く爆薬を扱っていたときに、それが思わぬタイミングで爆発し、爆薬を詰めるのに使っていた棒が、彼の頭を貫いて、前頭眼窩皮質を損傷しています。事故後、彼は衝動的に振る舞い、常にイライラしていて、他者に対して失礼な行動を取るようになりました。もともと穏やかな性格からは、全く想像ができない振る舞いでした。

この不幸な事故によって、前頭眼窩皮質には衝動を抑える働きがあり、ここを損傷すると、人格が変わってしまったように見えることがあると明らかになったのです。また、この部位の損傷では、甘いものなどを食べたい衝動を抑えることができず、過食してしまうこともあるとわかっています。

図31:鉄道建設会社で、現場監督をしていたフィニアスゲージさん。

ゲージさんは、爆発事故で、前頭眼窩皮質が傷ついてしまった。前頭眼窩皮質は、感情のコントロールに重要な役割を果たしており、この部位の損傷にあり、衝動的に振る舞うようになった。写真は自分を傷つけた、タイピングアイアンが持っている。ゲージさん

身体的な恐怖を感じにくくなる。

事故や脳卒中などで、前頭眼窩皮質を損傷した人を集めて、写真を見てもらう実験が行われたことがあります。

研究者たちは、単なる家や牧草など、感情的に動かされるものが何も写っていないニュートランの写真と、殺人現場や毒蛇など、強い恐怖や不安を感じる写真を用意して被験者に見せました。すると、健康な人は、感情的なニュートラルな写真を見ているときは、特に何も反応しませんでした、恐ろしい写真を見ると、一瞬で手に冷や汗を書く反応を見せました。

一方、前頭眼窩皮質に問題を抱える人は、恐ろしい写真に対してでさえ、汗を書いたりせず、体で反応する事はありませんでした。ただし、言葉では、恐ろしい写真が出ると、これはこれって好きな写真ですねなどと言うのです。

前頭眼窩皮質の問題では、言葉に問題がなく、記憶にも問題が出ません。だからこういう写真はグロテクスと呼ぶと言う事は、今までの経験からして、

知ってるので、そう話せるのですが、本当にグロテスクだと思っていたら、示すべき身体的反応が出ないのです。

前頭眼窩皮質に問題がある人は、身体的な恐怖が感じにくいために、手を出すべきでない蛇を触ってみたり、機械なギャンブルにも手を出してみたりすることがあるといえます。

今、この発言をするべきか、今この甘いものを食べるべきかと言うような事情的な判断も、身体で危険が感じられるかどうかに関係しています。

前頭眼窩皮質に問題があると、なんとなく今しないほうがいいと言うことを体で感じることができないので、言わないほうが良いことを言ってみてしまったり、食べないほうが良いものを食べてしまったりすることもあるのです。

太郎さんも前頭眼窩皮質の活動に問題が現れて、会議で関係ないことを話してしまったり、お菓子に夢中になったり、人前で苛立ちを抑えることが難しくなってしまったのかもしれません

また、消えたテレビ画面や鏡に映る自分自身を見ると、自分自身に対してなんでこうなんだと言う怒りが湧いてくることがあって、それを抑えられず、出てしまうことがあったのでしょう。

脳損傷しても、人格の全ては変わらない。

前頭眼窩皮質の活動低下で人格が変わったように見えてしまうことがあります。しかし私は、やはり脳の1つの部位の不具合で、人格の全てが変わってしまうとは考えられないです。穏やかだった人が、常にイライラするようになったり、大胆な行動をするようになったりしたら、周りの人は、その人がその人で亡くなったように感じてしまうのかもしれません。しかし、前頭側頭型認知症は、すべての認知の中で、1%から5%と言われていて、研究が遅れているところがあります。前頭眼窩皮質周辺の部位に、交通事故で損傷した人をたくさん見てきた。精神医学者は

感情や行動をコントロールするのが苦手であるように感じる事は多いが、
その人が利己的であるかと言うと、そのようには感じられない。

太郎さんも、一時的には、衝動的になったけれども、安心して穏やかに暮らせるようになった、ということでした。病気になると、自分の今まで通りに物事が運ばなくなるので、誰でも苛立ちを感じる機会は増えると思います。それが我慢しやすい人と、しにくい人がいるのです。

苛立ちを感じて、それをそのまま表現してしまうことがあるとしても、周りの人が理解するようになったり、自分でも慣れてきたりすると、苛立ちを感じる機会が少なくなっていくことがあると言うことを太郎さんは示しています。そしてそんなんじゃダメだ!と言う言葉が、太郎さんからよく発せられることを見ると、人を責めていると言うよりも、自分の状態を責めているようにも感じられます。

苛立ちがどうして現れるのか、より詳しく次の2つの事例で太郎さんの経過を追ってみていきましょう。

アシストポイント

感情のコントロールが難しくなってしまっていたら・・・・

目の前の状況にとらわれず、相手の思いに目を向けましょう。

ご本人の思い:

私らしさを大切にしたい

前頭側頭型認証の方は、脳のダメージを受けている部分の関係で、感情のコントロールが難しくなっています。

鏡に向かって怒鳴っている姿を見たりすると、周囲の人は、人が変わってしまったと感じてしまうかもしれません。

しかし、大切な事は、目の前の状況にとらわれずに、その人の思いに目を向けることです。

この馬鹿が! !と怒鳴っている状況に、その人が、その人自身に向けている怒りや焦りなどの複雑な思いを察することもできるでしょう。

アシストポイントは、その思いの根底にある、その人らしさに気づいた上で声かけをすることです。

そうした対応は、その人らしさの尊重と言うエネルギーとなって、相手に届くはずです。例えば、このときのご本人

の気持ちを代弁するように抑揚をつけて、辛いですよね、悔しいですよね、イライラらっしゃいますね、とても不安ですよね。などとその時のご本人が表出している感情の雰囲気を言葉にして共感的理解を示すと良いでしょう。

事例32

なぜ、前頭側頭型認知症の人は体調不良を言葉で伝えられないのか。

太郎さん、男性、75歳、要介護3、前頭側頭型認知症、夫婦2人暮らし

デイサービスの利用を開始した太郎さん。時々怒鳴ってしまった事はあっても、周囲の対応でイライラのトーンを下げて、しばらく比較的安定して過ごしていました。

ところが、食事や数分がうまく取れないことが増え、イライラして落ち着かなくなることが多くなり、世話をしようとした妻に手を挙げてしまいました。

デイサービスでも、そんなんじゃだめだ!と活動中に大きな声で怒鳴ったり、食も数口食べて残してしまうようになりました。

言葉として表さないものの、太郎さんの体調に何らかの変化があったことが想像できました。

そこで、太郎さんをよく観察したところ、口の中に口内炎が見つかりました。

どうやら、口内炎による痛みと不快感が状態の変化や食事を残してしまう要因になっていたことがわかりました。

スタッフは、自宅での様子を伺いながら、太郎さんが食べやすい調理や盛り付けの仕方、口腔ケアの方法を考え、家族の負担も配慮しながら対応を進めて状況を改善していきました

脳科学からの解説。

側頭葉は言葉の意味を理解する場所。

前頭型頭型認知症では、前頭眼窩皮質に初期から萎縮が始まり、前頭葉や側頭葉、そして、その他の部へと時間をかけて、萎縮が広がっていくことがあります。(図32)しかし、前頭側頭型認知症には別のタイプも知られており、側頭葉から萎縮が始まる人もいます。

前頭側頭型認知症は、感情や行動をコントロールするのが苦手であるので、相手の気持ちを代弁するように、とても不安ですよね。などと話して
あげると良いみたいですね。
田澤 美雪&田中 深雪より








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