今日はライフに買い物に行って来ました!
老後の資金が足りません!p291〜p347まで抜粋
2026年8月24日(月)老後の資金が足りません。
p291〜p319
その後どうするの?
家族全員で説得するんだよ。姉ちゃんの洗脳が解けるまでこの家に監禁すればいい。
いい考えかも
だろう?篤子さん、スケジュール考えてみてよ。僕も協力するから。
うん、そうする。
胃がしくしくと痛み出した
だが、隼人のはじめての給料で買ってきてくれたのだ。手をつけないわけにはいかない。
勇人の皿には大きく切ったタルトのせ、自分の皿には薄く切って載せた。
夫も勇人もとっくに寝たのだろうか。
テレビを消すと、家の中は静まり返った。
時計を見ると、夜中の2時だった。
最近は夜になってもなかなか寝付けず、深夜までつまらないテレビ番組をダラダラと見てしまうことが多くなった。
家の中がしんとしていると、途端に不安でたまらなくなる。
ちょっとテレビをつけた。
深夜のトーク番組のゲストは、自分と同い年の女優だった。
中学時代に、デビューしてる時からずっと彼女を見てきた。
不思議なことに、いつまで経っても、彼女は若いままで、もう同い年には見えなくなった。
私は毎年、必ず人間ドックに行ってますよ。
女優はそう答えた。
がんも早期に発見すれば治る時代ですからね。
あなた、そんなに長生きしたいと思ってるの?
心の中で女優に問いかけた。
私はそんなこと、全く思わない。
だって、お金のない老後は怖いよ。長生きしたいと思うのは、経済的に余裕のある人だけだよ。
でも本当は…あなたも私と同じようなものじゃない?
長生きしたくないんです。
最近は、テレビからも映画からもめったにお呼びがかからなくて、困窮してるんです。
なんてテレビで言うわけにはいかないもんね。
篤子ちゃんとゆう人はやな。
突如として、同級生の声が耳に蘇った。
誰よりも見えっ張りなのよ。
そうよ、私は見えっ張りだよ。それは何なの悪い?
口に出して言ってみた。
みんな同じだよ。この女優だってそう。それでどうにか自分を保っているんだもん。
自分の失業保険が切れる前に、なんとしても、次の仕事を見つけなければならない。
朝から晩までネットで検索しているのだが、50代女性の仕事と言えば、立ち仕事ばっかりだった。体力の衰えを考えると、1日8時間の立ち仕事はきつい。だが、事務の仕事は特別な資格でもない限り、目を皿のようにして探しても見つからなかった。
今更ながら、さやかの結婚や舅の葬式で大金を使ってしまったことが悔やまれる。
その上、姑への仕送り90,000円も肩に重くのしかかっている。
だから・・・・鈴与が言うようにかっこつけてる場合じゃない。体力は低下しているなどと面白いことを言っている場合でもない。どんな仕事でも、もうこうなったら、やるしかないのだ。
登録した派遣会社からは何も言ってこないので、あちこちの商店街を歩いて求人募集の張り紙を探すことにした。
店員同士がギスギスしている店は避けたい。わけ。あや頭では言わないが、1000名微笑みがこぼれる女性店員が1人でもいれば、安心できる職場である可能性が高い。そんな自分の直感を信じて、この目で確かめてみたかった。
介護の仕事なら人手不足と言われているから、きっと求人はあるのだろうが、やっぱりやりたくなかった。
安いしきつい。どうせ近い将来、実家の両親や夫の介護をしなければならない運命なんだろうから、今はまだ勘弁してほしい。
商店街歩いてると、ガラス張りの喫茶店で女性たちが談笑しているのが見えた。
みんなおしゃれをしていて、ゆったりとコーヒーを飲んでいる。
そういうのを目にするたび、自分以外の全員が余裕のある暮らしをしているように思えてくる。
応募の張り紙が出ていた店を何件かメモして帰宅した。
ダイニングテーブルに求人情報誌を広げ、メモした条件と比べてみた。赤ペンを持ち、片っ端か熱心にチェックしていく。
その時、玄関の鍵がチャリと開くことがした。できる音が図書館から帰ってきたと思っていたら、ただいまとさやかの声がしたので驚いて立ち上がり、玄関まで走り出た。
さやか、どうしたの?いきなり帰ってきて何かあったの?
たまには顔見せなさいってしつこく言ったのお母さんの方じゃないの?
さやかは靴を脱ぐと、さっさと廊下を置く歩いていく。
とついでも、なお実家を遠慮する必要のない自分の家だと思っている様子に少し安堵する。
あなたには帰る場所があるのよと背中に呼びかけたくなる。
リビングに入ると、何か飲もうかなぁとさやかは台所へ目を向けた。
その隙に素早くさやかの前身に目を走らせた。
元気そうには・・・見える。一応は。
だが、洋服もバックも見覚えがあった。
独身時代から使っているものだ。まさか琢磨から生活費を渡されていないとか。?
だから、洋服も新調できないのではないか。もしそうであれば。少し小遣いをやりたい。
だけど・・・自分にもお金がない。
お母さん、何じろじろ見てんの?
さやかの物言いが、どんどんきつくなっている。
子供の頃から本に張り付いていた気弱さが、消え失せてしまったように見えた。
さやか、そのバッグ、端が擦り切れてるじゃないの。
まだ使えるよ。
新しいのを買いなさいよ。みっともないわ。
お母さんてバブルの時代をいまだに引きずってるよね。逆に格好悪いよ。
やはり、さやかは変わった。妙に偉そうだし、話す声も大きい。
私、お腹ペコペコなんだ。お母さん何か食べるものある
子供のような物言いが、小学生だった頃のさやかを思い出させた。
あの頃は、まだ3DKの賃貸の公団住宅に住んでいた。
思えば、小さな生活だった。
そう、小さな生活という言葉がぴったり来る。
各家庭にパソコンもなければ、携帯電話も普及していなかったから、通信費と言えば固定電話だけだった。
水道水を飲んでいたし、子供の洋服は近所からお下がりをもらうことも多かった。
お金のかからない、こじんまりとした暮らしだった。それが次第に、いくらお金があっても足りないと感じるようになっていた。日本は豊かになったとも言えるが、それと引き換えに、仕事に追われ、生活に追われ、お金の事ばかりを考えるようになった。
お母さんの作ったチャーハンが食べたいよ。
さやかが甘えるように言う。だってお母さんが作ったの、おいしいんだもん。
そう言われたら嬉しくなった。
いいよ、作ってあげる。
あの当時、家にはいつも自分とさやかと勇人の3人だけだった。夫は仕事が忙しくて帰り遅く、どこの家庭もみんな母子家庭のようだった。
残り物で手早くチャーハンを作り、春雨で簡単な中華スープを作った。
いただきます。
ダイニングテーブルに向かいあって食べた。
知らない間に、さやかは早食いになっていた。何をするのにもゆっくりだったのに、こうも変わるものか。
おいしかった。
先に食べ終わった。さやかはお茶を2人分入れてくれた。
さやかはテーブルにあった。雑誌を何気なくパラパラと見ると。
はらりと1枚の写真が落ちた。いつだったか生花の展覧会を見に行ったときのものだ。
城ヶ崎は賞を取ったので、勇者ある寺で行われ、こけむした庭で記念に撮った。
さつきさんて相変わらず綺麗だねとさやかは感心したように言う。
きれい?どこが?
思わず問い詰めるような口調になってしまった。
みんなが目一杯おしゃれをしていった中、さつきだけが普段着だった。
さつきさんてスポーティで若々しいよ。
それにしても・・・この年代のおばさんたちつてみんな太ってるね。
それ、私のこと。
そういうわけじゃあ・・・ないけど。でも、サツキさん以外はみんな・・・
何なのよ。はっきり言いなさいよ。
なんだか、ゴテゴテ着飾っちゃって厚化粧で清潔感がないっていうか。アツ、ごめんごめん。怒らないでよ。そんなに気にすることないよ。
だって50代のおばさんなんてみんなこんなもんでしょ。ママなんてまだマシな方じゃない。
慰めているつもりらしい。
今までそれほどおしゃれにお金を使ってきたつもりはない。だが、さつきは、洋服には全くと言って良いほどお金をかけていない。それなのに・・・・
自分はお金の使い方が下手なのだろうか。各にもなんだかそう思った事はあつた。
節約は常に心がけてきた。だが、小さな贅沢を楽しむ加減がよくわからず、高すぎることも切って買った後に二の腕がきついことに気がついて、ひどく後悔したり、その一方で、好物の凪ぎを食べるのを何年も我慢したりしている。
さやかはお茶を飲み干すと立ち上がった。私、そろそろ帰る。
もう帰るの。もっとゆっくりしていきなさいよ。
だって琢磨が帰ってくるから、夕飯作らなきゃ。
さやかは自分の頭を呼び捨てにするようになっていた。
それは親しみの表れではなくて、憎しみから来るものではないか。
前もって言っておいてくれれば、とんかつか何か作っておいて持たせてあげたのに。
とんかつ位自分で作るよ。
せめてお父さんが帰るまで待っててよ。
冗談でしょう。お父さんは待っていたら夜中になっちゃうよ。
夫がリストラされた事は伝えていなかった。余計な心配をかけたくなかった。
窓の外を見ると、既に陽が傾いていた。
さっさと玄関に向かうさやかを追いかけながら、廊下の電気をつけた。
その途端、息を呑んだ。
さやかのくろはぎに、大きな紫色の痣があった。
黒のストッキングだから、隠れると思っていたのかもしれないが、はっきりと透けて見えた。
ねえ、さやか。
なあに?
ドアノブに手をかけて、さやかが振り向いた。
あのね・・・
うん、何よ。
もしもね、その・・・困っていることがあったら何でも言ってね。
困ってることなんて1個もないけど。
でも・・・だから、もしも、よ
変なの。でも、まぁ、一応ご心配ありがとう。それじゃあ帰るね。ごちそうさまでした。
バタンとドアが閉まった。
爽やかがいなくなると、家の中ががらんとしてるように感じた。
静けさが妙に気になった。
孤独だった。
あれほど、自由を謳歌したいと思っていたではないか。
子供や夫が手枷足枷となり、自分の時間がないことを嘆いていたのではなかったか。
それなのに、無性に寂しかった。
暴力は振るわれてるんじゃないの?
本当はそう尋ねてみたかった。だが、さらに心を閉ざしてしまうと直感的に思った。
夫に相談した方が良いのではないか。だってさやかの親は自分だけではない。
夫もまた親なのだ。
それなのに、子供に関して何でもかんでも母親だけが責任負うなんておかしいことだ。
だが、初行を失って、精神的に参っている人に、これ以上心配をかけるのはどうだろう。
もう少し様子を見てからでも遅くは無いのではないか。
夫はまるで自分の息子みたいだと思う。
あぁでもない、こうでもないと、先回りして気を使う自分は、妻ではなくて母親みたいだ。そんなのやっぱり変だ。
夫婦なのだから、悩みも互いに分かち合って助け合うべきではないのか。とは言え、DVのことを知れば、音はきっとショックを受けるだろう。
頭に血が上り、さやかのマンションへ飛んで行って、琢磨を殴り倒すかもしれない。
その時、もしも、さやかは琢磨をかぶったりしたらどうなる
さらに依怙地になったとしたら?
洗脳が溶ける日がた遠くなってしまうかもしれない。
大きなため息を1つ付き、台所に入って食器を洗った。その後、もくもくとお風呂掃除をし、ベランダから洗濯物を取り込んだ。
リビングで洗濯物をたたみながらテレビを見たが、さやかのことで、頭がいっぱいでニュースも上の空だった。
次の瞬間、衝動に駆られ、気づけば電話をかけていた。
もしもし、さやか?
お母さん、何今忙しいんだけど。
本当は琢磨さんから暴力を振ってんでしょう
遠回しに言うつもりが、担当直前に尋ねてしまっていた。
何なのよ。いきなり、変なこと言ってなる琢磨がそんなことするわけないじゃん。どこまでも、しらばっくりつもりらしい。
私、見たのよ。ふくらはぎの傷を。
馬鹿みたい。あれは自転車で転んだんだよ。
嘘つかないで。
嘘じゃないよ。本当だってば。ところでお母さん、何のようなの雅子それを聞くためにだけ電話してきたんじゃないよね。
大事なことじゃないの。
ばかみたい。用がなければ切るよ。じゃあね。
一方的に電話を切られてしまった。
さやかを目覚めさせるには、一体どうすればいいのか。
隼人も心配らしく、しばしメールを寄越してくる。
そのたびに、こちら大丈夫よ。しばらく私なりに1ヵ月方法を下がってみるからと返事をした。
社会人になったばかりの勇人には、新しい生活がある。
さやかが、帰ってくることになったら・・・と考えいる。
やはり手に職をつけさせてやりたい。
それには専門学校に通うお金がいる。そのためには失業保険が切れる前に仕事を見つけなければならない。
でも、なかなか良い仕事が見つからない。
また堂々巡りが始まった。この調子では今夜も眠れそうにない。
その夜、思い切って夫に行った。
ねぇ、章さん、天満さんに事情を話して力になってもらうように頼んでみれば?
天馬?
夫は苦虫を噛み潰したような顔をして黙り込んだ。
傷つけることはわかっていた。だが、このままでは生活が立ちゆかない。
天馬は音の同期で、出世頭だった。九州合併後もうまく立ち回り、本社の統括部長になったが、数年後には退職して会社興した。今も順調に業績を伸ばし、社員数もぐんと増えたと聞いている。
篤子が、天馬を見たのは20年も前のことだ。当時はどこの会社でも家族総出での会社のイベントが年に1度あった。
ソフトボール大会では、彼はいつもキャプテンを務めていて、遠目にも、俺が、俺がと前に出たからタイプに見えた。
スラリとした体躯で、帽子から靴まで、当時流行のスポーツブランドで固めていて、なんとも華のある男だった
夫は以前から天満のことが大嫌いだった。上司に取ることばっかりに一生懸命で、同僚や部下からは嫌われている人物だと言う。
なんで俺があんな奴に頭を下げなきゃならないんだ。
不機嫌を露わにして、自分の部屋に入ると、バタンとドアを閉めた。
言わなきゃよかった。ただでさえうつっとした気分で過ごしている。夫に、最も嫌っている人物に頭を下げろだなんて。
自分は優しさの足りない妻だと思う。
でも・・・そんなことを言っている場合じゃないのだが。
出かける用があると思うだけで、気持ちと言うのはちゃんとするらしい。その日の午後、篤子は簡単に化粧済ませると、区民会館へ行くために家を出た。区が主催する公園(老後の資金について)を聴くためだ。
大通りへ出て、区役所のバスに乗った。車窓から家々のこいのぼりが見える。バスの振動に合わせるかのように、頭の中で90,000円90,000円と塩化のような島回しがぐるぐると渦を巻く。明日は姑の口座にお金を振り込む日だ。どうしよう。払えないわけではない。まぁまだ夫婦ともに失業保険をもらっている。だが、先の見えない生活の中で、もうこれ以上仕送りなどしたくなかった。姑がギリギリの生活をしていると言うのなら、同情の余地はある。
何とかしてあげたい時と思うだろう。だが、あのケアマンションのロビーの豪華なシャンデリアときたらどうだ。室内のレストランで食事をしているらしいが、食の細い姑は半分以上残すと聞いている。無駄だらけだ。そんな贅沢な暮らしを通して、貧乏な私たち夫婦は伝えなきゃならないの?いつの間にか90,000円90,000円と言う脳内の歌が貧乏貧乏に変わっていた。
バスを降り、区民会館への坂道を登る。途中、喉の渇きを覚えた。バックの中からマグ取りを出そうとしたが、見つからない。キッチンのテーブルの上に用意しておいたのに、持ってくるのを忘れてしまったらしい。
たったそれだけのことで、一気に暗い気分になった。区民会館のロビーには、コンクリートむき出しの壁面にずらりと飲み物の自動販売機が並んでいる。端から順に見ていき、迷った末に暖かいほうじ茶のペットボトルを買った。
あぁ、150円の無駄遣い。篤子さんじゃないですか。振り返ると、つき当たっていた。敦子さんも講演を聞きに来たんですか?
うん・・・ちょっと参考までにね。さつきちゃんも?えー、私も参考までにとさつきはにこり笑った。
一緒に会場内に入ると、まだ開始時間まで余裕があるからか、席は半分しか埋まっていなかった
あそこに座っているの、美乃留さんじゃないですか?とさつきが指を刺す。
どこあれほんとだ。
通路側の席に美乃留が、ポツンと座ってるのが見えた。
さつきちゃんて目がいいんだね。
だってあのブレザー見覚えがあるから。
さつきが他人の来ている服を覚えているとは意外だった。おしゃれには全く興味がないのだと思っていた。だが、主婦としての観察力は抜群だと思えば当然かもしれない。
美乃留とは、月に1度のフラワーアレンジメント教室で顔を合わせていた。だが、アフタヌーンティーのときには話が合わないと判断したのか、それとも2人の長年のつき合いに、遠慮したのかはわからないが、教室が終わるとさっさと帰るようになった。だから一緒にお茶を飲んだのはあの時1回だけだった。
どうして?美乃留さんがここにいるんだろう。老後の失敗なんて縁がなさそうなのに。
篤子さん、他人の生活って意外と窺い知れないですよ。
さつきは、意味ありげにそう言うと、前列の方へと階段を下りて行く。
自分もその後について行った。
美乃留さん。お久しぶり。隣空いてる?
サツキが声をかけると美乃留ビクッと肩を震わせて、振り向いた。
・・・・ええ、もちろんです。どうぞ美乃留はバツの悪そうな顔をしながらも奥へ詰めてくれたので並んで座った。
司会者が出てきて挨拶をし、その後ファイナンシャルプランナーの女性と大学教授がそれぞれ30分ずつ講演をした。
篤子はメモを取るために、バックから手帳とボールペンを出していたが、最後まで1文字も書かなかった。
講演が終わると、大きな拍手が鳴り響いた。
すぐ後ろの席から来てよかったわ、本当に役に立ったわ、と言う声が聞こえてきたので、思わず振り返ってしまった。
70代位の女性連れと目があった。あなたも役に立ったでしょうと言うばかりに笑顔を向けてくる。
篤子はぎこちない微笑みを返した。
娘が結婚して、実家に遊びに帰って来た。篤子さんが、娘が結婚した旦那様にDVにあったかも知れないと思っていたので、娘に電話して、家へ呼んで、
その真相を聞いたが、娘は否定している。現実でなければいいですね。
篤子さんは、娘が結婚しても可愛いのですね!田中 深雪
