今日は、ライフで買い物したりゴミ捨てしたりして過ごしていました。
今日は、牛乳入りカレーライスを作ってみたよ!
2026年9月10日(木)なぜ認知症の人が家に帰りたがるのか?恩蔵絢子&永島徹185〜p205抜粋
事例11
なぜ、食事をうまく取れなくなるのか。
カズ代さん
カズ代さんは、積極的に外に出かけるタイプではなく、家族のために家事をすることが生きがいでした。料理の腕もなかなかで、おばあちゃんの味で、孫も育ったといいます。そんなカズ代さんでしたが、徐々に臆病がって台所に立てなくなっていきました。
そのため、娘さんが作った食事を食べるようになりました。娘さんの料理はいつも完食していましたが、次第にその様子にも変化が現れてきました。
箸が進まず、食事の時間がかかり、結局残してしまうことが多くなりました。手前のものだけ口をつけ、後は進めるとようやく手を伸ばすと言う具合です。1人で食べているときには、なおさら食事が進みません。すっかり食事遅くなってしまった様子に、家族は胃腸の調子が悪いのではと大変心配しました。けれど、やがてカズ代さんの様子を見ていて、どうやら目の前の人の食べる様子を見ながら、食べていることがわかってきました。
脳科学からの解説。
見えているのに気がつかないと言うことがある。
事例03でアルツハイマー型認知症では、注意に問題が出ることが多いと申し上げました。アルツハイマー型認知症の初期には、海馬の萎縮に加えて、後頭頂皮質は、感覚情報をまとめ上げるために重要な場所だと説明しましたが、注意を向けることにも重要な脳部位なのです。
この後頭頂皮質を事故や脳梗塞などで著しく損傷すると、半側空間無視と呼ばれる症状が現れることがあります。このような患者さんたちは、時計を書いてくださいと言われると、図11のように半分までしか描かず、これで完成だと言うのです。
時計の見本を見て書いてくださいと言われても、半分に全て押し込める。目は見えているのですが、世界の半分にしか注意がいかない状態になるのです。
図11:半側空間無視
時計の文字盤を見て書いてくださいと伝えても、後頭頂皮質に著しく損傷を負った患者は、半分くらいまでしか描くことができないことがある。
目は見えるのに世界の半分に注意が向かなくなってしまう現象を半側空間無視という。
目にも、視覚を担当する脳の中の視覚野にも、問題がないのに、後頭頂皮質に問題があって、注意が向かないからこそ、見えているのに気づかないということが起こります。
この部位が、アルツハイマー型認知症では、早い時期から活動が落ちてしまいます。そうすると、半側空間無視ほど劇的では無いけれど、
注意の問題で、例えば食事時にも、出された料理の全てには気づかない、ということが起こります。図12の左側のステーキに気がつかず、いつまでも右側の野菜だけを食べて、箸を置いてしまう。料理をした人にとっては、ステーキはメインなのにもかかわらず、それが無視されてしまうと悲しいことでしょう。
左側にある、と言うだけでなく、ステーキは暗い茶色しています。美味しそうに感じられないことがあるのかもしれません。しかし、ここにお肉あるよと誰かが指し示せば、お肉に注意が向いて、暗い色も肉のせいだとわかって食べられる可能性があります。
図12:食事のすべてに注意がいかないことがある。
後頭頂皮質の働きに問題を抱えると、注意力に問題が表れる。食事中、もしかすると、メインディッシュのステーキに気がつかないことがある。
カズ代さんも、自分の手前にある食べ物しか注意が向かないということでした。
端から見ていると、視野がとても狭くなったように感じるかもしれません。
後頭頂皮質の問題で、1つ1つのものが把握しにくく、注意が向きにくいことが問題なのです。
食事以外でも、例えば健康な人は道を歩いている時、自然に信号に注意が行き、赤信号なら止まります。しかし、アルツハイマー型認知症の人は、そもそも信号に気づかないと言うことが起こります。しかし、そこで赤信号だよと言えば、そうか、そうかと止まってくれます。目は見えていても、注意の問題のせいで気づかないと言うことがあるのです。
ミラーシステムを活用する。
その場合に助けになるのが、非言語コミュニケーションです。例えば、自分の前に人がいる人間と言うのは、多くの人にとって1番興味が湧くものですから、自然に注意が向いて、実際の目の前の人に人間がいて食べると言う動作をしているのを見ると、自然に真似ることができます。
また生まれたばかりの赤ちゃんも、例えば目の前の親が舌を突き出してみれば、真似をして舌を出してみます。(図13)
親が笑いかければ、笑ってみる。そのような模倣のシステムが、生まれながらに人間の脳には伝わっています。
生まれながらに持っているものは、それが製造のために大事だからこそ、はじめから備え付けられているのであって、そういうシステムほど認知症になっても残ると言われています。
図13:生まれた時から持っている脳の模倣システム
舌を突き出してるのを見ると、真似をする。
例えば、脳の中には、ミラーシステムと呼ばれている部位があります(図14)誰かがある恋をしてるのを見ると、自分がその行為をするときに働くのと、全く同じ神経細胞が、自動的に働いてしまうのです。他人の行為を鏡に移しとったように、自分の頭の中でやってみることによって、自分の行為のレパートリーを増やしたり、他人の気持ちを推測することができるようになるのだと言われています。模倣は、人間の学びの根本のものなのです。
図14:ミラーシステム
他人の行為を見ているだけで、あたかも自分がその行為をしているかのように働く神経細胞がある。それをミラーニューロン鏡の神経細胞)と呼ぶ。この神経細胞がある部位をミラーシステムと呼ぶだから、それを活用して見るのは良いことでしょう。もし周りの人が言葉で、これを食べてよといくら促しても食べられないことがあったら、言葉で食べようねと伝えるのではなく
自分が目の前で一緒に食べてしまうのです。健康な人でも、目の前の人がおいしそうに食べていると、お腹空いてくるものです。
カズ代さんは、自分の家族を大事にし、自分が食事を作らなくなった後も、娘さんの料理を残さず食べてきました。
今では、注意力や、体の衰えなどで、その日の調子によって、食べられない日が出てくるようになってしまったようですが、みんなが食べていると、真似ができる。みんなが食べていれば、集中して楽しく食べられるのです。
アシストポイント
食事がうまく取れなくなったら・・・・
ご本人の食事の様子をよく観察して、1工夫しましょう。
ご本人の思い:
食欲がないわけでは無いのに・・・
食事がうまく取れなくなってくると、どこか身体の具合が悪いのではと心配になります。認知症が進んで、ご飯の食べ方がわからなくなってしまったのでは?と考えてしまうかも。
食は細くなったように見えてしまう理由は様々考えられます。
まずはご本人の食事の様子をよく観察しましょう。その上で1工夫です。食事に手は伸びなかった人も、盛り付けをワンプレートにしたり、食事の道具を使いやすいものに変えることで、美味しく食べていただけることもあります。
食事に気づけるように、さりげなく声をかけたり、誰かが一緒に食事を取ることで、食べ方がわからにくい場合も、安心して召し上がっていただけます。
事例12
なぜ、食事をしたことを忘れてしまったり、食べ物以外のものを口に入れてしまうのか。
キクさん
農家に嫁いだキクさんは、働き者で、物静かな性格でした。3年前に夫が他界してからは、長男夫婦と暮らしてきました。その菊さんが、アルツハイマー型認知症を発症したのは9年前。徐々に生活行為や動作が緩慢になり、ベッドで過ごすことが多くなってきました。
長男夫婦は、共働きで、早朝から仕事に出てしまうため、菊さんの食事はおにぎりを用意して、いつでも食べれるようにしています。
ある時、お嫁さんが帰宅すると、菊さんがいつものように静かにベッドに座っていました。お母さん、ただいま、あれ?何か食べているの?キクさんは
口をもぐもぐしていたのです。よく見ると、スポンジを噛んでいました。どうやら、マットレスの模様をほじって穴を開けて、その中から
スポンジを取ったようです。お嫁さんは、慌てて口の中から取り出そうとしますが、菊さんはなかなか口を開けてくれず、人騒動になりました。
脳科学からの解説
食べられないものはわかる。
後頭頂皮質に問題があることで、アルツハイマー型認知症の人は、注意が適切に向かず、事例03の歯磨き粉と洗顔フォームを間違えた晶子さんのように、物の取り違えが起こることがあります。
この問題は、食事の場面では、例えば自分で口を拭いた白いティッシュを丸めたものをお皿の端に置いたら、しばらくして自分で置いたことを忘れて、なんだかお皿の上の白いものと言うことで、ご飯に見えてくる。つまり、ティッシュをご飯と取り違えて、口の中に入れて食べようとする、ということが起こります。よく異食と呼ばれる現象です。
キクさんも、おにぎりを食べ終えて、口寂しくなったのかもしれません。マットレスをいじっていたら、空いた穴からスポンジが出てきて、それが注意の問題のせいで、食べられるものに見え、口に入れてしまったんでしょう。
ティッシュやスポンジ、その他にも机の上に置いてある。細々としたものを間違えて口に入れてしまう。あるいは梅干しを口に入れて種をいつまでも下の上で転がしてしまう。それを見た周囲の人は明らかに食べられないものなのになんで食べようとするのだろうと不思議に思うことがあります。
しかし、驚くべきことに、アルツハイマー型認知症の人は、口の中に入れてもなかなか飲み込まないでいるのです。つまり、ちゃんと食べられるものか、食べられないものなのか、お口の中で判断できているのです。
赤ちゃんは、口に入れたものを飲み込んでしまうことがあるかもしれません。(しかしそれは誤飲と呼ばれるのに、認知症では、移植と呼ばれるのはおかしい気がします。)赤ちゃんは脳が発達途中なので、誤って飲み込んでしまうことがあるのですが、赤ちゃんも、おいしい美味しくないと言うように、生存にとって必要なものの判断はできます。美味しくないものをわざわざ飲み込もうとはしません。
1度脳が成熟し、たくさんの経験をしてきたアルツハイマー型認知症の人のどんななおさら、これは飲んではいけないと言う判断の力が培われており、その能力を発揮することができます。
おいしい美味しくない。これは食べて良いものか、いけないものかそのような生存において、とても大事な情報は、アルツハイマー型認知症の人は適切に判断できるのです。
食べてねと言っても食べなくなったら、自分が目の前で一緒に食べて下さい健康な人でも、目の前の人がおいしそうに食べていると、お腹空いてくるものです。
家族の皆様頑張って下さい。 田中 深雪より
