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今日は、美容室に行って、髪の毛を染めて来ました!

老後の資金が足りなくて、ちょっと心配です!

老後の資金がありません。

老後の資金がありません。

2026年8月19日(水)

視線に気づかないふりをして、マグカップを持ったまま、さやかの斜め向かいに座る。

なんだか、それ変だよと勇人が首を傾けた

勇人、頼もしいぞ。先を促すように、顔上げて勇人を見た。

僕にはわかんねぇなぁ。だってさぁ、これから一生共に暮らしていこうって言うのに、稼ぎの少ない彼女に待機を出させる感覚がおかしくねぇか?

それとも、もしかして、姉ちゃん自身も盛大にやりたいとか思ってんの?

だったら仕方ないけど・・・

まさか。私は披露宴じたやりたくないよ。

写真館で写真を1枚撮るだけで十分なの。

やはりそうだったか。

さやかは、幼い頃から目立つことが嫌いだった。

学芸会の時でも、できるなら、人の背中に隠れていたいタイプだった。

結婚が一緒に1度の事だからといって、お姫様気分に浸りたいなどと夢見たりはしないのだろう。

松平家に遠慮して自分の希望を言えないのかもしれない。

琢磨だけの希望なら、まだしも、親の商売所の戦略も絡んでいるとなれば、気の弱いさやかが抵抗できるはずがない。

姉ちゃんがそう思ってること、琢磨さんに言ってみたのかよ。

え?うん、一応・・・言ってはみたけどね。

消え入りそうな声になる。

そしたら、琢磨さんはなんて?

琢磨さんも何も言わなかったけど、お義母さんが結婚は二人だけの問題じゃないって。

僕はそう思わねぇなぁ。結婚ていうのは、やっぱり2人だけの問題だろう。

勇人は子供なんだよ。

弟の前では、大人ぶるが、篤子から見ると、勇人の方がずっとしっかりしている。

勇人は小さい頃から自分と言うものを持っていて、人の意見に流されないところがある。

その時、ふと、さやかは中学に入学した頃のことを思い出した

黒板ノートに書き写す時、ここは重要だから赤ペンで書きなさいと細かく指示する女の先生がいた。

そのために、隣席の女の子が赤ペン貸してと手を伸ばしてくるので、さやか断われずにいた。

なかなか赤ペンを返してくれないので、待っているうちに、どこは赤ペンでかけと言われたのか、毎回わからなくなってしまう。

そのことを、篤子に打ち明けたのは1学期も終わろうとする頃だった。

まるで小学生のようだと呆れた。

どうしてそこまで自分に自信のない子に育ったのか。

なぜ、当然の権利を主張できないのか。

隣の子に赤ペンを忘れずに持ってくるように言いなさい。

そんなこと言えない。

だったら、貸さないとはっきり断りなさい。

無理だよ。

さやか、しっかりしなさい。嫌な事は嫌だと言いなさい。

そう言ってり飛ばしたのが昨日の事のようだ。

あれから少しは成長したのだろうか。

我が娘といえども、内面まではわからない。

あの時、母親の言いつけ通り、貸さないと言って断ったら、相手はいきなり起こりだしたらしい。

そして、さやかのことを、優しさのかけらもない子だと言いふらしたったらしたと言う。

何かあるたびに、もしも自分だったらどうするかを考えてアドバイスしてきた。.

だが、それが間違いだと気づいたのは、ずいぶん後になってからだ。

自分とさやかは似ていない。

そもそも、自分であれば、たかが同級生の女子なんかに舐められたりしない。

自分とは、性格も能力も違う女の子を、一体どう育てたらいいのか。

正直言ってわからなくなった。

それに比べて、勇人は思春期の頃でさえ快活だし、成績も上に中高ともにバスケ部でキャプテンを務めていた。

だから、勇人のことで心配した事は今までほとんどない。

あのさぁ、姉ちゃん、琢磨さんて人はさぁ、言いかけて、勇人はテレビを消し、ソファーに沈めていた身体起こして、姉を正面から見た。

優しい人なの?

あまりに素朴な問いかけだった。

何言ってんのよ。そんなの当たり前でしょう。変なこと聞かないでよ。

さやかは怒ってみせるが、気弱な横顔が気になった。

ねぇ、さやか、麻布寿園でやる事は今更変えられないとしても、内容はもっと簡素にすればどうかな?

例えば、お色直しの回数を少なくするとか、引き出物をもっと安いものにするとか、料理の格を下げるとか

でも・・・・何度も式場に通って、琢磨さんのお母さんも交えて話し合って決めたんだし、もう今更・・・

琢磨の母親が何から何まで口出しするので、篤子は本番の日まで、式場には顔出さないことに決めていた

琢磨の母親と衝突したりしたら、後々さやかが嫌みを言われたりして苦労するのではないかと考えての事だった。

ちょっと篤子さ、それからのことで、節約してもたかが知れてるって。

勇人は、中学時代から、母親のことを篤子さんと呼ぶようになった。

思春期になった頃、ママと呼ぶのが恥ずかしくなり、かといって、母さんもテレビドラマみたいで、照れくさいし、お袋は昭和時代の映画のようで変だからと、迷った末の苦肉の策だったのだろう。

篤子さん、そもそも麻布寿園で、結婚式を挙げること自体、お高いわけよ。

それはそうだけど、でも、勇人少しでも・・・・

篤子さんまぁ聞きなよ。

100人招待するとして、料理を2000円下げたところで、200,000円浮くだけだよ。

篤子さんは、できれば、ドカンと安くしたいわけだろ?

勇人の言う通りだ。総額6,000,000円のところ、できれば3,000,000円以下にしてもらいたい。

ママ、そうなの?そんなに安くしたいの?

さやかが不安にこちらを見る。

そういうわけじゃないの。おめでたい席なんだし、ケチケチするのもなんだしね。

心にもないことが、口から勝手に飛び出してくる。

勇人は微かに首を頃げると、背を向けて、テレビの方へ向き直った。

子供の頃から、勘の鋭い息子は、母親の気持ちも、懐具合もお見通しなのかもしれない。

あ、時間だ。私そろそろ行くね。

さやかは久しぶりに高校時代の親友に会って食事するらしい。

清楚なワンピースの裾を揺らしながら、玄関を出て行くと、勇人は立ち上がった。

ねー、篤子さん、自分から呼びかけておいて、こちらを見ないまま台所に入り、冷蔵庫を物色し始めた。

琢磨さんて、なんとなく僕、やばいと思うんだよね。

背中を向けたまま言う。嗅覚の鋭い息子の言葉で、一気に不安が押し寄せる。

やばいって、何が?

あんまりいい人に思えないんだよね。

勇人が松平琢磨に会ったのは、家族揃っての会食のときの1度だけだ

不安を拭いさりたくて言ってみた。

人は見かけじゃわからないわよ。

無愛想な人がやめ、案外いい人だってこともあるし、表面上にニコニコしてるからって優しい人とは限らないよ。

あのねえ、僕は小学生じゃないんだよ。

そんなこと言われなくたってわかってるよ。

勇人は振り返り、しかめっつらを使って見せた。

それよりさぁ、結婚するなら絶対に金持ちがいいって、姉ちゃんが言い出したのって、いつ頃からかなあ?

大学4年生位かな。就職の内定がなかなか出なくて不安になったでしょう。

だよねえ。だけど、今時男の経済力に頼って生きていくの、どうなんだろう。リスクは高い気がするけどな。あつこれ食べていい?

勇人は微笑みを見せた。冷蔵庫にアイスクリームを見つけたらしい。

それにさぁ、琢磨さんが勤めている、山岡貿易って言う商社、中堅というより零細の部類だよ。バイトの先輩がそこに就職したけど、給料安すぎてこんなのじゃ、一生結婚できねぇって嘆いてたもん。

えつ、そうなの?

城南大学を卒業していると聞いているから、忠犬以上だろうと勝手に思っていた。

でも、琢磨さんのお父さんは手広く商売してる人だから。

だから、何?

だから、息子夫婦に援助するんじゃないの?

それは結婚式や、新居にかかる費用は援助するかもしれないけど、その後はどうするんだよ。

サラリーマンの息子に毎月仕送りしたりするわけ?

金持ちってそういうこともするもんなの?

僕たち、庶民には考えられないんだけど。

そういえば・・・そうね

勇人と話せば話すほど不安になってくる。

それとも、既に岐阜のスーパーの株をもらってんの?

その配当金が入るとか?

あぁなるほどね。そうかもしれない。

少し気持ちが落ち着いた。

そういうこと、ちゃんと聞いたほうがいいんじゃねえの?

さやかはもう28よ。

親が口出しすることじゃないでしょう。

私は結婚する時だって、自分たちが勝手に何もかも決めちゃったもの。

心配しなくても大丈夫じゃない? .

安心したくたって、同意を得ようと笑いかけた。

カチカチに固まったアイスクリームと格闘していた勇人は、冷やかな目でチラリとこちらを見た。

それ違うんじゃね?

篤子さんは、ガキの頃からしっかりしてたんじゃないの?

田舎のばあちゃんがそう言ってたよ。

だけど、姉ちゃんは違う。

どういうところが?

いくつになってもいまひとつしっかりしていないところ。

だから?

だから、私にどうしろと。

一体何歳まで、子供の面倒を見なければならないの。

大学を出してあげたのだから、後は1人で強く生きていって欲しい。そう思って投げ出したくなることがある。

だが・・・それは強者の考え方だ。

さやかを育てる過程で、篤子はそのことを思い知った。

もしも、さやかが勇人と同じような利発な子供であれば、自分は世の中の1部分しか見ないで、弱者のなんたるかを知らないまま一生を終えたのではないかと思うことがある。

健康な身体に恵まれているかかわらず、職に溢れたり、貧乏のどん底だったりする人々を、あの人たちは努力が足りないせいであぁなったのだ。

自業自得なのだと、嘯いていたことだろう。

どういう人なら、さやかにお似合いだと思う。

結婚が決まっているのに、今更こんな話題はどうかと思うが聞いてみたかった。

わかんない。ただ、姉ちゃんと同じように気の弱い人だったら心配だよ。

でしょう?だから琢磨さんみたいに、少し位無愛想でも強い男性の方が安心じゃない。

男と女に年齢なんて関係ないでしょう。

そうかもしれないけど・・・琢磨さんが強い人間だってこと、なんでわかるわけ?

無口だから、男は黙って仕事するって言うタイプかなと思う。

お父さんはおしゃべりだけど、仕事はちゃんとしていると思うよ。僕だっておしゃべりだし。

改めて、問われてみれば、琢磨を強くてしっかりした人間だと思う根拠は何だったのかがわからなくなる。

そう思いたかっただけなのか。

でも、やっぱり、あの2人はお似合いだと思うの。

さやかは、ちょい男性の後を半歩下がってついていくタイプではないか。自分にあまり似てない娘の事は、母親といえどもよくわからないが迷う。

50歳を過ぎた。今となっては、夫なんて言うものは、外でしっかり稼いできて、その上優しい人だったら、それだけで御の字じだと思うようになった。

自分は、若い頃から、女性をぐいぐい引っ張っていくタイプの男性を好きになったこともないし、付き合ったこともない。そもそも、そういった男性が自分のような生意気な女に声をかけて来るはずもない。だが、篤子の親の世代は、夫婦間に上下関係が、あるのが普通だったことを思えば、さやかも案外うまくいくのではないかと思う。

このアイス、固すぎて、スプーンが突き刺さんねーよ。レンジでちょっとだけチンしてみようかな。どう思う?

勇人は、篤子の返事も待たずに、電子レンジの扉を開けた。

デスクの内線電話が鳴った。

はい、経理部です。

もしもし、人事部の鈴木ですが、そちらに後藤篤子さんいます?

はい、私ですが?

すみませんが、お手すきの時にでも、人事課までお越し願えますか?

承知いたしました。

人事から電話があるなんて珍しいことだった。

何のようだろう。もしかして、正社員ととか?

この春に3者が合併して、社名が変わったから、社内の雰囲気は悪くなった。

篤子の両隣に座っていた優秀な社員は、2人とも地方へ異動を命じられた。

後任には、常識もなければ、やる気もない40代の正社員の男女が来た。

女性社員は、旅行が趣味で、朝からずっと旅行会社のサイトを眺めている。

男性社員は飽きもせず、ももいろ、クローバージェットの動画を食いるように見つめている。

上司の目がない時は、やりたい放題だ。

それに比べて、今日の自分は、午前中だけで彼らの1週間分の仕事はしたと思う。

彼らのせいで、異様なほど忙しくなった。

それなのに、給料は彼らよりずっと少ない。

以前は、950円の時給が1000円に上がったなどと言っては大喜びしていたが、だんだんばかばかしくなり、今では憤りを通り越して、正社員に対し、太憎しみを抱きそうになることさえある

篤子は人事課に行く途中にトイレにより、髪を整えて、口紅を切りと引き直した。

経理部の後藤篤子です。

部屋に入り、手前に座ってた人事家の女の子に声をかけると、奥の方で鈴木課長が立ち上がったのが見えた。

後藤さん、お呼び立てしてすみません。

どうぞこちらへ。

そう言って、別のドアを指し示す。

鈴木は常ににこやかな男性だった。

40歳前後だが、物腰が柔らかで、育ちが良さそうな印象を受ける。

スーツもネクタイも地味だが、よく見ると上質だ。

えっと、後藤篤子さんですね・・・

そう言いながら、鈴木はファイルを開いた。

後藤篤子さん、あなたがいないと経理部は立ち行かないので、来月から正社員になってくれませんか?

その一言で給料は何倍にもなる。

夢のようだった。いや、働きぶりを考慮すれば当然のことだ。遅する位だ。期待を込めて、鈴木の口元をじっと見つめた。

最初は、直接雇用のパートだったんですね。それで合併後は、半年ごとの雇用契約になっています。のことご存知ですか?

はい、聞いております。

それでっと・・・今月末でちょうど半年ですから、契約満了になるわけですが。

まさか、単に更新するだけなのか?だったら時給は今までと変わらない。

今月をもって、期間満了とさせていただきます。

え?それは、どういうことですか、?

更新はしないと言うことです。

と言うと?意味がわからなかった。

ですからと言葉を区切り、彼は視線を外した。今月で終了ということです。

まさか、クビっていうことですか?

そんな・・・今までずっと一生懸命働いてきたのに。

おっしゃる通りです。私も非常に残念に思います。

真面目に頑張っておられる事は、経理部の課長からも聞いております。

ですが、この地域の営業所が閉鎖されることになりましたので、整理解雇の一環なんですよ。

私なら、少し位遠いところでも構いません。

それがそうもいかないんですよ。合併といっても対等じゃありませんからね。僕だってこれからどうなるかわからないんです。

申告、そんな表情がわざとらしかった。

もう決定事項ですから。

抗議しようとする篤子の口を封じるように、そう鈴木はきっぱりと言い放ち、壁の時計をチラリと見やると、さも忙しそうに立ち上がった。

秋風が吹き始めた頃、さやかが結婚した。

披露宴は、予定通り、盛大に執り行われた。

美しい花嫁だった。細身で色白だからか、痛々しいほどの清潔感が漂っていた。

雛壇に座ったさやかが、終始嬉しそうに微笑んでいたことに、篤子は内心ほっとしていた。

と言うのも、挙式の1週間ほど前から、表情が曇ってるように感じられて心配だったからだ。

しかし、どうやら取り越し苦労だったようだ。

マリッジブルーと言う一過性のものだったらしい。

新郎の父親の得意先の一団が、雛壇の前の特等席を占領していた。乾杯の音頭は取引先の銀行の支店長がやり、その後似たようなスーツ姿の男性たちの挨拶が延々と続いた。

一体誰の結婚式なのか、商売のための絶対にしか見えなかった。

こんな、力関係の中で、果たして、さやかは大切にされるのだろうか。

夫は、花束贈呈の画面でも晴れがましい表情でニコニコしていた。

号泣したのは、篤子の方だった。

よくもここまで立派に育ってくれたと言う感慨ではない。

娘が嫁に行く寂しさでもない。

不安と、心配の入り混じった不憫さだけが心を占めていた。

式も披露宴も滞りなく済み、若い人たちはレストランでの二次会へ流れていった。

篤子の実家からは、両親と兄弟族が、出席してくれた。

疲労感でいっぱいの中、年老いた両親を東京見物に連れて行くのは骨が折れると思っていたが、数年前まで東京に住んでいた、兄夫婦は、先頭に立ってくれたので、大助かりだった。

結局、挙式と披露宴、イタリアの新婚旅行、新居の準備などで、篤子が貯金を崩して出してやったのは5,000,000円にもなった。

金持ちはケチだと言うのは本当だった。

きっちりと花嫁側にかかった分を請求された。

世間の常識からすれば当たり前のことで、文句言う筋合いではないのかもしれない。

だが、お色直しを最低3回はやって欲しいだとか、引き出物は高級ブランド品でなければ困るだとか、細々と注文をつけてきたのは松平家側だ。

それを思えば、やっぱり釈然としなかった。

それよりも何よりも、気の弱いさやかは、地味婚を望んでいたのだ。

ひな壇で、終始微笑んでいたのは、もしかして演技ではなかったか。

そう思うと、さらに不憫になった。

2ヶ月前にリストラされてからと言うもの、敦子はずっと仕事を探し続けていた。

パート収にはなくなったが、卒業保険をもらっているので、クラスはそれまでと変わりはなかった。

だが、失業保険が切れる前であっても、良い仕事が見つかった時は、そのチャンスを逃さず、すぐにでも仕事につきたいと考えていた。

さやかの結婚式で5,000,000円も使ったために、12,000,000円あった。貯金は、残り7,000,000円となってしまった。

老後の資金は、最低60,000,000円は必要です。

美容院で呼んだ雑誌やそう書かれていた。このままでは、老後が心配だ。

さやかからは何も言ってこなかった。結婚後もちょくちょく実家に顔出すものだと思っていたので、心にぽっかりと穴が空いたようだった。

さやかが、突然帰ってきて、台所を覗くなり、この肉じゃがうちの夕飯にもらってていい?と言って、ちゃっかりタッパーに詰めて持って帰る場面も何度も想像した。

もしかして、今日あたり、ひょっこり顔出すかもしれないと思い、惣菜を多めに作った日も何とかあった。

新婚旅行の土産や、式の写真は郵送してきたが、岐阜でのお披露目の話もまだ聞いていない。夫は頼りのないのは良い頼りって昔から言うだろうとのんびり構えている。

その土曜日も、篤子は朝からミートソースを煮込んでいた。

トマト缶を使うのではなく、新鮮なトマトを刻み、ひき肉は和牛の赤身だけを使う。

玉ねぎのみじん切りをじっくり炒めると、コクのある仕上がりになり、粉チーズとよく合う。

さやかの大好物だ。

おっと、いい匂いだと思ったら、篤子風特製ミートソースじゃん。

深めのフライパンを木杓子でかき回す篤子の背後からかなぁ、勇人が覗き込んだ。うまそう

俺がフォーク出すから、勇人は冷蔵庫から粉チーズ出せ。

夫までが早いだ声を出す。

最後に、テーブルの真ん中にサラダの入った大食いなガラス鉢を置くと、食卓が整った。

さやかったら、全然帰ってこないわね。パスタをフォークに絡めながら、向かいに座っている夫に話かけた。

うまくやってる証拠だろ。

夫は気にも留めてないらしく、満足そうにパスタをほおばっている。

そうかなぁ。

そうじゃなきゃなんだ?メールは来るんだろう

それはこっちが出せば、簡単な返事位は来るけどね。

メールでは元気そうなんだろう?

うん、まぁね。

姉ちゃんたちは、熱々の新婚さんなんだから、楽しく暮らしてるよ。

勇人の言葉で、やっと気持ちが落ち着いた。

考えてみれば、自分にもそういった時期あったではないか。心配そうな声で、母が電話してくるたびにうっとうし以上思ったのを思い出した。

さやかが幸せであれば、それでいい。

そう、自分に言い聞かすことで、さやかのいない寂しさを心の奥にしまった。

結局、挙式の予算は3,000,000 万円だったはずが、万円披露宴、イタリアの新婚旅行、新居の準備などでプラス2000,000で、篤子さんが、出してやった額は5,000,000円にもなり大変だなと思いました。田中 深雪より




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