今日は、台風の影響のせいで、少し曇っていますね!
今日は、ストーブの鍋で昆布を入れおかゆを作ってみました。
2026年9月18日(金)なぜ認知症の人は家に帰りたがるのか 恩蔵絢子&永島 徹p352〜p379
再認を使う
言葉は、人間の経験の頂上だからこそ、発達に時間がかかり、思春期、青年期、さらに大人になっても語彙は植え続けるものですし、一つ一つの言葉の意味も年齢とともに豊かになり、成長し続けます。このように後から獲得されたもの(生存に絶対必要なものから遠いもの)ほど、語彙では影響を受けやすいところがあります(図26)。文字を書くと言うのは、しゃべるよりも後にも学んだことで、人間にとって1番難しいことの1つなので、得意だった人も認知が進むとできなくなってしまう可能性があります。
図26:言葉は体験の頂点。
私たちは目で見たもの、耳で聞いたもの、体で感じたこと、それらを全て総合して体験を言葉にする。言葉は私たちの体験の頂点である。
言葉で表せないからといって、体験が全て消えてしまったわけではない。特に漢字で書くと言う行為は、最も難しいことだと思われる。
しかし、漢字で書けないからといって、自分の名前がわからなくなったわけではありません。耳で、文子さんと呼ばれたものを聞けば、はいと返事をするはずです。注意が届かないで、返事ができないこともあるかもしれませんが、すぐに自分の名前もわからなくなってしまうのだと思う必要はありません。めったに効かない人の名前等とは違って、生涯でなんとなく聞いてきた、そして、呼んできた、自分の名前や大事な人の名前は忘れるものではありません。
あなたの名前はなんですか?と聞かれて答えられなかったとしても、文子さんですか?と聞かれれば、はいと答えられるものです。何も答えが与えられずに、自分で思い出す自由想起と、選択肢が与えられて、その中から正しいものを選ぶ再認では、難しさが違います。自由想起ではなくても、再認はできることがあります。
自分で文子ですと言えなくても、文子さんですか?はい、久美子さんですかいいえと言える再認ができると言う事は、その人の中に名前がしっかり残っている証拠なのです。
残っている記憶に対してのアクセスのしやすさが問題なだけであって、難しさは漢字で書く、自分で言える、自分からは言えないけれども、聞かれればわかると言う順になっています。周りの人が聞き方を変えれば、本当はその人がわかっていることが確かめられます。
認知症が進めば、意味を忘れてしまう単語も出てくる事は事実です。でも忘れてしまったと簡単に決めつけずに、再認を使ってみれば、思い出せなかったりすることがあるかもしれません。そのような時は、表情を見てください。その表情から完全に忘れてしまったのではなく、親しみを持っている事は伝わるかもしれません。また、その時の記憶の貯蔵庫にアクセスできないだけで、別のときにはすんなり子供の名前が出てくるかもしれません。
なお、再認については、次の事例28でも説明します。
アシストポイント
自分の名前を漢字で書けなくなってしまったら・・・
ご本人と一緒にできることを確かめる機会を増やしましょう。
ご本人の思い:当たり前にできていたことが、できなくなり不安です。
認知症が進まないように、家族はご本人にできることをやってもらおうと考えます。自分の名前を書いてもらうこともその一つ。家族としてはこれまで当たり前にできていたことから、できるだろう(できて欲しい)と言う思うと、できなくなっていたら、どうしようと言う不安な思いがあるでしょう。
不安な家族は、ご本人の苦手になってきていることばかりに目が向き、できることが見えにくくなってしまいます。
アシストポイントは、名前は漢字で書く以外にも、できることをご本人と一緒に確かめる機会を増やしていくことです。また、慣れない場所で緊張した状況では、漢字を書けなくても、自宅などでリラックスした状況なら書くことができるかもしれません。
できることの確認は、お互い安心、ご本人の自信につながり、持っている力を引き出してくれます。
事例28
なぜ、伝えたいことが、伝えられなくなるのか。
育江さん、女性、82歳、要介護3、アルツハイマー型認証、夫と、息子夫婦の4人暮らし
育江さんが物忘れが顕著になり始めたのは、70代後半からでした。同居する息子夫婦は共働きのため、育江さんのサポートは夫が行ってきましたが、体力的にも難しくなり、デイサービスの利用を始めました。
もともと、社交的な人柄の育江さんは初めて会う利用者に、ここどうぞと笑顔で自分の隣の空いている席を進めます。けれど、話し始めると、家で毎日暗くなると、どんどんやってね。みゆちゃん(孫の名前)がばあちゃん、がんばれーがんばれーて言うのよと、一見流暢に話してるようで、その内容はまるで関係のない支離滅裂なことを話しています。相手の機嫌な表情に、育江さんの表情もこわばってしまうのでした
脳科学からの解説。
人生の中で最も印象的なことを繰り返して話す。
アルツハイマー型認知症が進行して、海馬の萎縮が進み、大脳皮質全体に萎縮が起きてくると、自分が覚えている昔の記憶の中の自分が気になることだけを繰り返し話すこともあります。また、相手の話す言葉の理解が難しくなり、一見支離滅裂な話をすることがあります。
育江さんの場合も、今は初対面の人に挨拶をする場面だと言う事はなんとなくわかるので、挨拶と言えば家で毎日することだと思って話し始めましたが、次に言うべきことがわからなくなり、自分にとって大切な孫の名前が頭に浮かんだので、口にしてみましたが、その話も長くは続けられず、堂々巡りになってしまいました。
脳の中で、自分からアクセスできる記憶は少なくなるため、人生の中で最も印象的なことを繰り返して話してしまうのです。
今、みんなが話している言葉を正しく認識できて、その場で記憶することができたなら、適切な会話をすることができるかもしれませんが、海馬の萎縮のためにそれが叶いません。このようなときの対策は、脳の中に残っていることと、アクセスできることと区別することです。(図27)
いつも同じことを話すからといって、その他のことが全て消えてしまったわけでは無いのです。本当に記憶はなくなってしまったのか、その記憶にただアクセスできないだけなのかは分けて考える必要があります。
図27;覚えていることの中で、意識アクセスできる記憶は、ほんの1部
アルツハイマー型、認知症の人は、記憶の中で最も強く残っていることを繰り返す。話すことがあるが、聞き手が自由想起ではなく、再認を使って
その間の話題をふってみると、その人の中にある他の記憶にアクセスができることがある。自分からは話さなくても、多くの記憶が残っていると考えられる。
再認を使い、別の記憶にアクセスする。
事例27でお話しした通り、再認を使う、すなわちこれは黄色ですかとか、あなたは〇〇さんですかと言う形で、他の人が答えを与えるとご本人もそうだそうだと思い出すことがあります。自分で自分の中にある多様な記憶を自由想起できず、いつも同じ話題、例えばお孫さんや戦争といった話題が繰り返されるならば、周りが再認を使って話しかけてみると良いでしょう。
この人が生まれた時代は、こんな時代だから、これを知っているのではないかと予想して何かを聞くと、知ってる知ってる!と言う。
家族からその人の人生について聞き取りをしておいて、こんなこともあったのではないですか?とご本人に働きかけてみると、そうだった。私はこういうことが好きだったと、自分ではアクセスできなかった記憶や感情
を、思い出すことがあります。これによって、コミニケーションが取れたと言う感覚が、お互いに生じることになるのです。
自分の体験もあれこれと言葉で自由に伝えられなくなっていても、何か1つでもひとに伝わったと言う感覚を持てる事は、ご本人と周囲の人、どちらにとっても暮らしやすさを大きく変えます。
もうできないだろう、これを忘れてしまったなら、あれもダメだろう。などと、自分のことを、そして、どんな人のことも、決めつけないことです。
思わぬ記憶が誰の中にも眠っていて、それが引き出された時、みんなが幸せになることがある。人間を決めつけない。それが1番大事にするべきことかもしれません。
アシストポイント
伝えたいことが伝えられなくなったら・・・
アクセスポイントを理解して、働きかけてみましょう。
ご本人の思い:
一生懸命伝えようとしているのに、伝わらない
伝えたいことがあるから、一生懸命話そうとしているのに、伝わらない。
ご本人は、そのことを相手の表情や様子から感じ取って、ますます自信をなくし、人とつながる意欲も低下してしまいそうです。
アシストポイントは、人とのつながりを安心して楽しめるようにすること。そのために生活背景や大切にしてきたこと、頑張ってきたことなど、ご本人に関する情報を生かして、家族やスタッフから話しかけてみましょう。それは現在はつながりにくいけれど、つながりたい大切な記憶へのアクセスポイントになり、ご本人の意欲の向上も期待できます。
事例29:
なぜ、レビー小体型認知症の人は無気力になったり、運動障害が現れるのか?
治雄さん、男性66歳、要介護2、レビー小体型認知証、兄と2人暮らし。
春男さんは独身で一人暮らし。溶接節工場に長く勤務し、実直な性格と仕事の丁寧さで、工場長から厚い信頼を得ていました。
その工場長から兄に相談があると連絡ありました。
内容は、春男さんが少し前からはきがなくなり、無断欠勤や道に迷って職場にたどり着けないことがあり、心配した工場長が春男さんのアパートを尋ねると、部屋の中はごちゃごちゃで、お金の管理もできないでいるのか、至るところに封筒に入ったままのお札や小銭がバラバラと落ちていたそうです。
この状況に驚いた工場長が、病院受診を進めたところ、うつ病と診断されました。ところが、改善する様子がなかったので、別の病院を受診したところ、レビー小体型認知症と診断されたと言うのです。
兄はすぐに、春男さんを実家に呼び戻し、同居することにしました。実家に戻った当初、春男さんは自転車に乗って、近隣を散策していましたが、道に迷ってしまうのか、昼過ぎに出かけたのに、汗だくで戻っていることが続くようになりました。また転倒したような擦り傷増えていきました。
やがて、独り言を言ったり、夜中に行動的になり、朝を遅くまで寝ていることが続くようになりました。ところが、その半年後、今度は自宅に引きこもりがちになっていきました。
脳科学からの解説。
レビー小体型認知症の特徴。
認知の中では、アルツハイマー型認知症と診断される人が最も多いので、この本ではまず事例01から28でアルツハイマー型認知症の人の生活における困り事を紹介し、なぜそのような症状が現れるのか、どのような対策を取れば
良いのかを解説してきました。ここからは、他の認知についても少しお話ししたいと思います。
アルツハイマー型認知症について多いのがレビー小体型認知症です。認知症の原因は完全には解明されていないのですが、アルツハイマー型認知症は
脳の中に異常なタンパク質、アミロイドβの塊老人班ができ、それが長い時間をかけて、神経細胞、一つ一つの中に、神経原繊維繊維変化を引き起こして、細胞が死んでしまうことが原因と言う説があります。一方、レビー小体型認証は、レビー小体と言う別のタンパク質の塊が脳の中に蓄積することで引き起こされると考えられています。
認知症は、脳の神経細胞が様々な原因で死んでしまい、その領域は徐々に広がっていく病気です。とはいっても、多くの領域がダメージを受けるまでには診断を受けてから10から20年以上の長い時間がかかります。
病気になっても、やりたいことができる多くの時間があることを忘れないようにしましょう
ただ、最初にどの領域から問題が始まるかが、認知の種類によって異なります。
症例が多いだけに、アルツハイマー型認知症に関する研究が最も進んでいて、その他の認知症については、まだ混迷を極めています。その上での話になりますが、アルツハイマー型認知症で、最初にダメージを受ける部位は、海馬とその周辺組織です。
しかし、レビー小体型認知症では、海馬とその周辺組織は病気が進んでも比較的無事だと言われています。だから、ビー小体型認証では、記憶障害はあまり現れず、生活の困ることも全く違ってくるのです。
そして、パーキンソン病の原因と考えられているのも、レビー小体型認知症と同じ、レビー小体です。
パーキンソン病は、主に運動障害が現れる病気です。初期の症状としては、動作がゆっくりになり、体が突然固まったようになったり、手足が震えたり、背を保つことができなくなったりします。
レビー小体型認知症とパーキンソン病では、レビー小体が多く溜まる場所が異なっていて、レビー小体型認知症では、進化的に新しい脳の表面に一致する組織、大脳皮質に溜まるのに対して、パーキンソン病の場合は、その深いところにある運動を司る大脳規定核に主に溜まるとされています。しかし、レビー小体型認知症とパーキンソン病の症状は、併発することも多いのです。
生活の困り事、①運動障害
さて、ここからは具体的なレビー小体認知症型認知症のおける生活の困り事を見ていきます。
レビー小体型認知症では、まず春男さんもそうだったように、はきがないと周りの人が感じたり、うつ病と診断されたりすることが多いと言う特徴があります。
アルツハイマー型認知症の約2倍物の人が鬱状態を経験するとされています。
その原因の1つは、先に述べたように、パーキンソン病との関連があります。
レビー小体型認知症では、体が動かしくなることがあり、運動障害のために
機敏に動くことができず、他人からは、はきがなくなってしまったように見えてしまうことがあります。
春男さんも、物理的に体が動きにくくて、無断欠勤をしてしまった可能性があります。また、筋肉をうまく動かすことができなることで、顔の表情が乏しくなったり、口を動かすことが億劫になったりすることがあります。
そうすると、誰かがその人に話しかけても、以前のように生き生きと顔の表情で返せなくなったり、言葉を返せなくなったりして、周りの人が破棄はなくなったと感じてしまうのです。
つまり、まずは、本当に廃棄がなくなったわけではなく、その人の心の中では、いろいろな感情が動き、言いたいこともたくさんあるのですが、運動障害のせいで、それらをうまく表せないから、そう見えてしまうことがあるのです。
対策としては見えてしまうだけなのだから、ちゃんと気持ちを聞くことです。
その人の持っている興味を丹念に聞いて、やりたいと思うことをやれ
るような工夫をしていきましょう。生活の中に正しいと思えることを増やすことが1番大切なことです。
筋肉が動かしにくいだけなのに、あの人はあまり以前のように話をしなくなった、私と話すのがつまらなかったかもしれないと、周りが勘違いして、その人から離れていってしまったら、寂しさから、その人は本当に意欲をなくしてしまうかもしれません。
しかし、先に述べたように、レビー小体型認知症の人は、アルツハイマー型認知症の人よりも、実際に、うつ病と診断される割合が高いと言われています。
アルツハイマー型認知症の人は、自我が脅かされて不安を感じて、無気力や鬱状態になることがあると説明してきましたが、海馬が萎縮してできないことが増えているから感じる。不安や鬱と、また違う原因がレビー小体型認知症にはあるのかもしれません。
特に、レビー小体の溜まりやすい大脳基底核は、ドーパミンと言う脳内で快楽や動機を司る神経伝達物質を放出する神経細胞がたくさん集まっている場所です。レビー小体型認知症やパーキンソン病を患う人の経験をするうつは、無快感症がが特徴だと示す研究があります。つまり、うれしいことがあっても快が感じられにくくなる可能性があるのです。楽しいことを感じにくいがゆえに、鬱になることがある。
ドーパミンは精神的な快楽にも関われば、身体運動の快活さに関わるので、ドーパミンを放出する神経細胞がたくさんある部位に問題が起こると、2重の意味で好きだったことに手を出しにくなってしまうのかもしれません。
レビーー小体型認知症には、モチベーションが維持しにくい、楽しみを感じにくい中で、いかに楽しみを作り出せるか、と言う難しさがあるのかもしれません。しかし、少し位物事が億劫になるところがあっても、自分1人ではなく、誰かが一緒にいてくれれば、健康な人もみんながそうであるように、何かやりたいと言う気持ちを持つ事は可能です。実際に、後にご紹介する三橋昭さんのように、快活に暮らしている方がいます。
だからこそ、特に記憶に障害がなく、やりたいことがあれば、自分の目的を言葉にできるレビー小体型認知症の人の気持ちを、周りの人がゆっくり聞くことが大事だと思うのです。
生活の困り事、②幻覚
レビー小体型認知症でもう一つよく言われる症状があります。認知的な揺れと呼ばれる症状です。
アルツハイマー型認知症は、海馬の萎縮のせいで、今やっていることの目的を忘れてしまうなどの認知的な失敗が起こるのです。
レビー小体型認知症では、突然ぼーっとしてまた突然はっきりとした意識状態に戻ることがあると言われます。課題の種類によらず、つまり、何が苦手ということではなく、急に全体的に注意が届かなくなる時があるのです。そういった症状を認知的な揺れといいます。
ドーパミンは、脳全体を復活させるところがあるので、これもドーパミンが減ってしまうことになるのかもしれません。
春男さんは、ドーパミン不足なので、うまく体が動かず、様々なことが億劫になってしまったのかもしれません。しかし、独り言を言うこともあり、夜に活動的になっているとの事。
事例30で詳しく説明しますが、幻覚症状や睡眠障害もレビー小体型認知症の特徴です。それによる身体的、心理的負担も春男さんのはきのなさの原因の1つかもしれません。
例えば、春男さんが独り言を言うのは、幻覚を見ているからかもしれません。
幻覚は、現実区別がつかない位に、鮮やかに、そこに何かがあるように見えたり、聞こえたりすることです。だから、独り言と言うよりも、他の人には見えない何かに話しかけられて、答えているのかもしれません。
レビー小体型認知症では、大脳皮質の視覚野やの活動に問題が出ることが知られています。視覚野とは目から入ってきた情報処理する脳領域です。
その領域がうまく働かないから、見えるはずのないものが見える幻覚が頻繁に起こるのかもしれません。
他の人が見えていないものを見るなんて、周りの人はびっくりしてしまうかもしれません。しかし、1番不安を感じているのはご本人です。
例えば、レビー小体型認知症を持ち、自分が見る幻覚を、絵に描いて、どんな感じがするのかを伝えている。三橋昭さんが最初に見た幻覚は、
部屋の中に愛猫が入ってきたからなでようとしたら、手が擦り抜けたと言うものだったといいます。(図280
そんなことがあったら、通常これは幻覚だ!と気づいて、こんな事は起こってはいけないと動揺することでしょう。
普段でないことが起こっていると、戸惑って、レビー小体型認知の人では、幻覚があることを打ち明けられないで、悩んでいる人も多いので、
周りの人がゆっくり聞くことが大事だと思います。終わり
田澤 美雪&田中 美雪より皆様へ
